昨年に描き始めた絵画。気に入らず、未完成のまま放置していた。2月になって意欲が出てきてようやく出来上がった。

地球の生命、人間の爆発的なパワー、地球の上に膨張する人間集団の限界、そうしたことを思い浮かべながら描いたのだが、ここにきて新型コロナウイルス感染者の世界的な増加と奇妙に絵がシンクロしてしまった。仕事ができない状態なので、絵を元にしてこんな動画を作った。

hazimari from Saitou Sakihei on Vimeo.

生命が自らを複製し、増えてゆく時、最初はゆっくりとしか成長しないように見えるが、次第に増える速度を増し、やがて急激に数を増していく。感染もまた、生物の成長と同じ増え方を示す。

生物は皆、何らかの環境条件の元でのみ生きられる。大抵の場合、新たに生まれるものと死ぬもの、そのバランスが取れる近辺で増えたり減ったりを繰り返す。イワシが数を増せば、それを食べる大型魚や鯨、そして人間が勢いを増し、イワシの数が減るようにだ。そうした圧力が弱い場合、増加に歯止めが掛からなくなる。

人間はこの1万年くらいの間に急激に増えた。本来であればとっくの昔に頭打ちになっていてもおかしくないが、人間は「闘う」ことが大好きな生き物だ。獣と闘い、虫と闘い、森と闘い、川と闘い、海と闘い、病と闘い、自分と闘い、目標と闘い、そして人同士闘う。そうして限界を乗り越えてきた。しかし、それは人自身を含む生き物から「生きる環境」を奪う。

ウイルスは不完全なものだ。増えるためには他の生き物に入り込み、そのDNA複製システムを乗っ取るしかない。細菌と違って、自分で活動することはまったくない。だからエネルギー消費はゼロである。他者に取りついたとき初めて「生きる」。その意味で人間はウイルスからだけは、「生きる環境」を奪うことができない。ウイルスの生きる環境とは人間社会だからだ。ウイルスは人間にとって鏡のような存在だとも言える。人間社会が膨れあがれば上がるほど、ウイルスが広がる条件もまた整う。

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