ことばについて細かいことが気になる性格。それが災いして、妻から煙たがられる。今日は会話の中で妻が、
「赤ちゃんががね、…」
と言うので、
「ちょっと待って。その赤ちゃんて、年齢は何ヶ月くらい?生後半年?1年?」
「もういい。あーめんどくさ」
やってしまった。
しかし、だ。街を散歩していて、
「あらー、かわいい赤ちゃん」
という歓声に振り向くと、大人たちが2歳くらいの子どもをあやしていたりするのも珍しくはない。だから、会話の中で「赤ちゃん」と言われても、どれくらいの子か想像しにくい。その「赤ちゃん」の年齢が何ヶ月くらいか知りたくなるのも、しかたないのではないか。
いったい「赤ちゃん」は生まれて何ヶ月くらいまでを指すのだろうか?生まれたての子は文字通り赤い。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月経って首が座っても、まだ這うことすらままならない。
しかし、1歳以上の歩ける子や、言葉を話し始めた子までも赤ちゃんと呼ぶのは、さすがに変ではないのか。年上の男性が二十歳前後の大人の女性を女の子と呼んだり、同年齢の男が女をさして「あのこ」などと言うのと、ちょっと似ている気がする。両者とも、呼ぶ対象をかわいく思うと同時に、無意識のうちに相手を能力の低い存在とみなしているとは言えないか。そう思うと、どうも釈然としない。
そもそも、赤ちゃんという言葉は幼児語だ。大人同士の会話や、テレビや新聞報道などのメディアでこのような幼児語を使うのを聞いたり読んだりすると居心地が悪い。それをいうなら「赤ん坊」だろう。
では、乳幼児は日本語で何と呼ばれてきたか。生まれたては赤児(あかご)、乳のみで育つ間は乳飲児(ちのみご)、歩けるようになったら幼児(おさなご)ということばがある。地方よってはまた別の呼び名があるかもしれない。ことばは使わないと死んでしまう。もっとこうしたことばを使った方がよいと思う。