歌ではないが、「おとこのこ」は、考えてみるとちょっと変なことばだ。おとコのコ と、コが二重になっている。実は、コには子どもを意味する場合もあるし、若い男を意味する場合もある。一方、現代ではコは若い女性を指すようにもなっている。

歴史的には、かつて
メノコ =女の子 対 ヲノコ =男の子
ヲトメ =若い未婚の女 対 ヲトコ =若い男
ヲミナ =若い(美しい)女 対 ヲグナ =若い男
オミナ =成人の(歳をとった)女 対 オキナ =成人の(歳をとった)男
ということばが使われていたという。ここで、メとミは女を意味する語根、ヲとグ、キは男を意味する語根だ。また、ヲトは「若い」という意味で、早乙女はオトメの中でも性成熟には至らない若い部類の女性をさしたのだろう。夫婦はメオトと言うが、元の発音はメヲット、であって、つまり[メ+ヲヒト]が詰まったものだという。

では、昔は女一般、男一般を指して単にメ、ヲと言ったのかどうか。不勉強で、そこのところがわからない。それはともかく、若い女を意味したヲミナが女一般を意味するようになり、発音がヲンナに変化し、現在のオンナになったらしい。一方、成人の男を指す言葉は、平安時代に変化しはじめる。本来は男の子を意味したヲノコが物語などでは成人の男に使われる例がある。さらに時代が進むにつれ、本来は若い男を意味したヲトコが男の意味で使われるようになり、発音が変化して現在のオトコになる。

このように、女はヲミナ/ヲグナ系列から、男はヲトメ/ヲトコ系列から来ており、ねじれたかっこうをしているが、現在のオンナ、オトコという言葉は元々の意味では各々、若い女と男、を意味する。若いというのは、生殖可能な年齢であるという意味を含む。だから、「女の子」を昔の言葉に直訳すると「若い成人の女の子ども」、「男の子」は「若い成人の男の子ども」と言う、なんとも意味不明のことばになるというわけだ。

どうも、日本の文化には歴史的にも、若いとか子どもっぽいことを好む傾向があるようだ。「かわいい」ということばが世界に広がったが、これもその傾向の一部と捉えてよさそうに思う。

それにしても、成人の女性を「おんなのこ」と呼んだり、アナウンサーに対して女性だけ「女子アナ」と呼んだりするのは、いかがなものか。そのことばを発する男あるいは女の中に、女を「子ども扱い」したい心理が働いているのではないだろうか。

そう言えば、昔勤めていた会社で、同僚の男性社員を男子と呼ぶ人がいた。そのひとは女性で、学生時代にバレーボールの部活に打ち込み、そのときの言葉遣いが抜けないらしかった。そのときは笑って済ませていたが、スポーツ競技は男女の別を非常に気にするところがある。そういうところが私は好きでない。

この記事を共有

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。