前回の日記(秋の到来 多摩の里山を散策した)で、正体不明のニョロニョロについて写真つきで書いたが、その後わかったことについて。

XとInstagramにこんな写真をのせて、わかる人いませんか、と呼びかけたところ、ある方からすぐに反応があり、シラウオタケというキノコではないか、と教えていただいた。他の知り合いからも、Google画像検索にかけたらシラウオタケがヒットしたよ、と返信がきた。
シラウオタケをキーワード検索してみたら、確かに自分が見た奴らとよく似た写真が見つかった。シラウオタケについて書かれている以下の記事が信頼性が高く参考になった。
千葉県立中央博物館 教室博日記 No.2031 https://www.chiba-muse.or.jp/natural/special/yama/news/2021/20211024multiclavula.htm 筆者 尾崎煙雄上席研究員
その記事によると、シラウオタケは倒木などの上に群れ生えるキノコで、長さは1cmくらい。筆者によればチンアナゴの群れを思わせるという。さらに、このキノコが生える場所は必ず緑に覆われており、これは緑藻1である。
ここに書かれた特徴は私が見た件の生き物によく当てはまるので、正体はシラウオタケで当たりだろう。

尾崎さんの上記記事にはさらにおもしろいことが書かれていた。シラウオタケは緑藻と共生しており、菌糸を緑藻にのばして栄養をとっているという。
私の撮影した写真を拡大してよく見ると、基部に白っぽい糊のようなものが確認できるものもあった(写真3右上)。おそらくこれは菌糸の束なのだろう。

ということは地衣類ではないか!「里山の地衣類ハンドブック」(文一総合出版)を書棚から取り出して索引を見たらあった。どこかで目にしたと思ったデジャブ感の理由がこれでわかった。前にこの本で読んでいたのだ。
地衣類は大抵の場合、菌が緑藻などを中に取り込んで「飼っている」が、シラウオタケの場合はそのようには見えない。緑藻は緑藻で広がりを持っているかのように見える。しかし、実は菌糸が緑藻を取り込んで飼っていることには変わりない。子実体に緑藻が含まれないのか、白っぽいため、それだけが別の生き物のように見えているだけだ。
地衣類を構成する菌の99.7%はカビなどと同じ子嚢菌類。これに対してシラウオタケはシイタケやマツタケなどと同じ担子菌類に属する。地衣類としては珍しいのだ。ハンドブックに掲載されている地衣類の中で担子菌はシラウオタケ1種しかない。ただし、希少種というわけではなく、割合ふつうに見つかるらしい。
シラウオタケ 白魚茸 Multiclavula mucida(カレエダタケ科シラウオタケ属)
- 緑藻…かつては真核生物のうち、細胞内に葉緑体を持ち光合成を行う生物のうち、陸上植物以外がまとめて「緑藻植物」に分類されていたが、今では系統的にいくつものグループに別れることがわかっている。ハンドブックには、シラウオタケの共生藻はコッコミクサ属Coccomyxaであると記載されているが、升本は培養実験の結果をもとにElliptochloris 属藻類であるとしている。https://www.jstage.jst.go.jp/article/msj7abst/65/0/65_28/_pdf/-char/ja ↩︎