大型の台風8号が列島を襲い、またも土石流による死者が出た。

“土石流が9日夕に民家を直撃して一家4人が巻き込まれ、中学生1人が死亡した長野県南木曽(なぎそ)町読書(よみかき)では、土石流が襲った扇状の現場に大人の背丈ほどもある大岩がそこかしこに転がり、土石流のすさまじさを物語る。土石流は幹線道路や鉄道を寸断、最大で町民約300人が避難所で不安な一夜を過ごした。県は同町へ災害救助法を適用し、国土交通省は10日朝から専門家らによる現地調査を始めた。”

(毎日新聞2014年7月10日より)

南木曽町は過去にも度々土石流が発生したところだと報道されている。土石流の発生メカニズムにはいくつかのパターンがあるが、専門家によるとこの地方の地盤は花崗岩質で土壌が薄く、集中豪雨によって一気に表土の崩壊がおこった可能性があるという。(朝日新聞取材 静岡大防災総合センターの牛山素行教授の見解、NHK総合 日本地すべり学会副会長・落合博貴森林総合研究所企画部長ほか

日本列島は平地が少なく、水系の面積も広くない。河川の長さが短く急勾配だ。大陸を流れる河川と比べると日本の川はほとんど滝のようなものなのだ。
http://www.nilim.go.jp/lab/rcg/newhp/yougo/words/028/028.html

しかも雨は梅雨期と台風の時に集中する。にも関わらず年間を通じて深刻な水不足にならない一番の理由は、山地を土と森林が覆っていることだ。

土は岩や石と何が違うのか。土は単なる鉱物ではなく、鉱物、有機物と生物の複合体だ。鉱物の粒子が小さく、粒子同士が密になっているのが粘土で、水を通しにくい。鉱物の粒子が大きく、有機物に乏しいのが砂。日本の山地を覆う土壌の表層の多くは、鉱物粒子の大きさがその中間で、有機物を含み、水が浸透しやすく、かつ保水性があるという、一見矛盾した性質をもっている。

森林に降り注いだ雨はある程度表土にしみこんで蓄えられ、時間をかけて粘土層か岩盤に達し、少しずつ川へ注ぐ。

仮にまったく土がなかったとしたら、土石流もおこらないだろうが、その代わり砂漠同然になってしまう。

土石流はしばしば甚大な災害としてニュースになるが、実はもっと静かに国土の荒廃が進んでいる。「土壌の劣化」だ。

数年前の2月、私は土壌の流出をこの目で確認するために山に入った。行き先は東京の水源地、奥多摩。集落から登山道を上っていくとスギの木にリスが。実は奥多摩町は知る人ぞ知る野生動物の宝庫なのだ。カモシカやムササビなどは簡単に見ることができる。

登山道を避け、スギの植林地帯に分け入ると、足がずぶりと土に飲み込まれた。落ち葉でふかふかだからではない。土が砂のようになってしまっていたのだ。下草はまったく生えていない。いつ土砂崩れがおきてもおかしくない状況だった。(この項続く)

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